2015年2月27日金曜日

雁坂のビールをかえた男

「マッサン」の影響でウイスキーが売れに売れているとか。「山崎」「竹鶴」は品薄状況。私も上では黒ヒゲを愛飲しております。ですが今回はビールの話です。昔の「NHKプロジェクトX」風に抑揚をつけてお楽しみください。「地上の星」をバックに流すとより効果的です。
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 昨年の夏の暑い日だった。
手にした缶ビールを飲む男の顔にも汗がにじんでいた。
今年、何度目かの雁坂小屋。
縦走の途中で立ち寄ったのでもなく、ただ雁坂だけを目的にして登って来ていた。
 テン場の気にいった場所に陣取り、ビールを飲みながら野田知祐を読みふける。
 手にする雁坂のビールは、何年もの間「スーパードライ」だった。
 この日、水場の脇のベンチでたまたま一緒になった男の客と二人、すでに十数本のビールを空にしていた。
「このビールしか置けない?。苦味とコクのあるやつとかはダメ?」
男はこれまで何度も感じていた事を口にした。 
 その時の小屋番は、どの銘柄にしても価格面ではさほどの違いがないと考えた。
銘柄の事は他のお客様からも、何度となく言われてきたことでもあった。
ただ、消費税アップに備え、春に仕入れた在庫がどうなっているかが気になった。
すぐさまオーナーに連絡を入れ事情を説明した。
黙って聞いていたオーナーは、「わかった」とだけ答えた。
 「他の銘柄の物も調達する手はずを整えた
と連絡があったのはそれから数時間後だった。
 新たな投資や役所の許認可が必要な事は直ぐには難しい。だが、お客様の為に小屋の努力でできることは労をいとわないのがオーナーの方針だった。
盆や正月の帰省した兄弟と同じで
いつでも揃っている訳ではありません
小屋番から話を聞いて「素晴らしい。このフットワークの軽さと、常にお客のことを考えている姿勢」と、男は思った。翌週から、「ドライ」に加え「キリン」も人の背で小屋に上げられて、水場の桶で冷やされることになった。
 夏も終わるころ、雁坂にまた男の姿があった。小屋番で上がっていたオーナーと話をしながらキリンを二本飲みほすと、日帰りで小屋を降りて行った。
 その後、背負子に付けられて小屋に上がるビールは、ドライとキリンが交互になっていった。
 11月半ば。小屋締め間際の雁坂に今年9回めになる男の姿があった。この日は小屋泊まり。雁坂を愛する仲間との宴が行われた。日本酒や焼酎が有りながらも小屋のビールに手を伸ばし、その都度料金を支払って楽しむ男の姿があった。
更に、12月の冬季閉鎖中に、10回目の男の姿が雁坂にあった。 
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突出コースからの雁坂小屋

*先週、突出を上がったyamajii様の話で、だるま坂付近での積雪が1mを超すくらい。日中は雪が溶けワカンに張り付いて苦しかったとのこと。途中で引き返したそうです。詳しくは下を開いてご覧ください。
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-592373.html#comment943829

*ニュース:山梨県が、7月1日~11月末まで雁坂トンネルの通行料金を無料にすることが決まったと報じていました。

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